【第20話】灯火の数だけ伝わらない願い
今日のチルった音楽は注釈からどうぞ。*1
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この物語の主人公は絹ごしトウフの『チル太』。
コピーにもなっていない演奏を続けていたチル太のバンド
『神風チャンプルー』だが、初ライブが決まった。
それは結成後1年たった、8月の夏だ。
これは、5月のはじめのはなし。
フレーズの数だけあるドラマ
チル太がいたのは、音楽スタジオだ。
よくサーキットライブを行っていたライブハウスの近くで
入口が楽器を搬入出するような場所じゃない間口。
ドラマーのOGは、いつも汗をかきながら地下にある
スタジオにきていた。
PoRcくん)
みんなきいてくれ。
神チャンのホームページに問い合わせがあったんだ。
『学生イベント』に出ないかってオファーだ。
PoRcはメンバーの中でもバンド経験があった。
集まることだけが楽しみだったが、これまたなんとなく
バンドのホームページを作成していた。
GOU-ya)
さっすがぽーくん!
前のバンドのホームページもつくったのぽーくん?
GOU-yaは非常に軽いノリで話しかけた。
彼は付き合っちゃいけない『3B』の特徴をすべて持っているかのような男だ。
OG)
冷静じゃん。ぽーくん。
せっかくだからオリジナルの曲つくってやらない?
わからない音楽理論に突き刺した感性
チル太)
曲つくるっていっても、どうすりゃいいのかわからんぞ。
チル太にとって曲とは、コピーするものであり作るという考えがなかった。
GOU-ya)
たしかにねぇ。でもバンドのサウンドを決めるのは、
ギターでしょ?チル太に任せてみるのもありだな!
OG)
さすがにいきなりは無理かもだけど、、、どう?チル太
『神チャン』はバンドリーダーがいないため、基本多数派が正義だ。
バンド内での意見を通したい時、酒をおごるやら、めしおごるやらで
買収するのが最も効率のいい方法だった。
PoRcくん)
コード進行と曲のテイストだけ先にきめて、
そこから足していくのが普通だよな。
さすが経験者。彼の前身のバンドはそこそこ有名だった。
やる気に見合っていないスキルや経験が彼にはあったのだ。
GOU-ya)
最近の流行といえば、マイファスとかじゃない??
シャウトとか入れようぜ!!
特にこの時期、ONE OK ROCKの流れもあり、
ボーカルはハイトーン。弦楽器退が少し重めなバッキングで刻む楽曲が多かった。
OG)
おれは賛成だよ。アイアンコブラもバシバシ踏めるからさっ!
セッティングには時間のかからないOG。ほかに持っているといえば、
カウベルと小さめなスプラッシュシンバルぐらいだ。
じゃあエモい曲パクってラップにのせればいい?
チル太)
じゃあ、いま流行っていて、かっこいいバンドの曲からコード取ってくるわ。
それにギターフレーズ載せて曲にしていこうぜ!
好きなコード進行に、好きなギターリフを載せる。
指ならしでやっていた練習のひとつだった。
PoRcくん)
いいじゃね。それでいこうぜ。重めのサウンドで、サビにはエモいメロ。
Aメロでシャウトも入れようぜ。Bメロは音数少なめだな。
OG)
はいはい!こんな感じ?!
ドカドカドカドカ・・・・シャンシャン!!
彼は大学生になってからは、菅沼孝三を目標としている。
タバコを吸うときも必ずYoutubeで『手数王』の動画をみている。
もちろん、叩いたフレーズは、遊園地のタコのようにバラバラな速打だ。
GOU-ya)
その日の練習は、初めて実のある練習だったと言える。
いつもの手にする缶チューハイや、たばこの量は今日だけ半分以下だった。
音楽に熱中する日々をようやく迎えることができたのだ。
インスピレーションに従って進むだけだ
チル太は、ひとり暗闇の部屋で目をつぶりギターを担いでいた。
(チル太)
あのコード進行だけを感じ取って、新しいものを生まなきゃいけないんだ。
そう。ただ、インスピレーションに従って、、
音楽を創造することは、
聞いた曲の数やジャンルによって生まれる
彼の凝り固まった趣味が、バンドに調和する曲を生むのかは、未知だった。
(チル太)
なんにもないんだ。
バンドマン人生はここからだ。ここがスタート地点なんだ
真っ暗な部屋で、光るエフェクターの電源。
そこはキャパ5名のライブハウス。彼は初めて音楽を世に放ったのだ。
何気なく弾いたその曲を、パソコンに何度も録音した。
良かったテイクのみを、つぎはぎに貼り付けて
プリセットのドラムパターンを他のチャンネルに入れた。
LRにギター。センターにドラムだけのデモが完成した。
(チル太)
はじめてにしては、悪くないんじゃないか。
よしっ。送るか。43MB?結構でかいサイズになったな。
赤ん坊もBIGな奴は最初から大きいっていうもんな。
チル太が使っていたヤフーメールのサーバーは厳格にメールをはじいた。
その曲は『Ethique(エティック)』
曲は5月のゴールデンウイーク終わりにデモができ、5月末に完成した。
今どきの音楽をなんとなく取り入れて、ラップした曲。
ライブではパート数の兼ね合いから同期のシステムが必要だった。
チル太はインスピレーションに従いすぎて、
バンドの編成から逸脱してしまったのだ。
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OG)
これどうやってもライブで再現できねぇな。
同期のシステムそろえるか??
金がないバンドではなかった。なぜならバンドとしてお金を使っていないからだ
PoRcくん)
もしかしたらおれらの音楽性にはシステム使った方が良いのかもな。
だったら買うのもありだよなぁ。
PoRcくんはさすがである。機材の基礎知識も備えているのだ。
チル太)
作曲してみたけど、やっぱり難しいな。ただ、同期のシステムさえそろえば
ライブでもある程度ごまかしが利くというか、、、
なら、買うことは賛成だな。
バンドマンとしてのレベルの低さを同期演奏でうち消す作戦だ。
GOU-ya)
それが『神チャン』っぽいよね。なんだか!
芸術を創出する人は、だれでも思うだろう。
なんで伝わらないんだろう
少ない楽器の編成で、想像以上のアンサンブルを奏でるバンドはたくさんいる。
ただ、全てを伝えたいと思うまっすぐな気持ちに、正直で生きる事。
それもまた、『バンド』なんだろう。
*1:今日のチルった音楽はこちら!